弁護士ブログ(日々の出来事)
2013年5月27日 月曜日
契約の立会い(高齢者の契約書作成)
昨日のブログにも書いたが、先週の金曜日、ある銀行の契約に立ち会った。その銀行では、75歳以上の者との契約に際しては、弁護士が、その意思の確認のために契約に立会うシステムを取っている。むろん、そのような高齢者への貸付ではなく(通常はそのような高齢者が返済資金を自ら用意することはできないから。)、その高齢者の子供が借主となり、その高齢者の不動産を担保提供するというものである(担保提供の場合は連帯保証人にもなる場合が通常である。)
高齢者が、資産を持っていることから、事業資金が必要な子供にとっては、その親の土地。建物を担保提供してもらうということが、考えられるからである。
最初の問題は、高齢者の意思確認をどの程度行うのかという点である。この点は、公正証書遺言の場合の公証人の立会いと同じような問題なのかもしれない(ただし、遺言の場合よりもかなり複雑である。)。まず、本人確認(写真のついているもので確認する。免許証やパスポートの無い場合は、住民基本ネットなどの利用しかない。話をしてその答え方で、聴力や理解力を確認する。生年月日を言って貰うだけでは足りない。日常の生活ぶり(テレビの番組の話やニュースの話にどの位関心があるかなど)を聞き、社会性の程度を探る(連帯保証や担保提供は、相当高度な社会的な行動である。)。
問題はここからである。通常は、借主(主債務者)も来ており、銀行の担当者が、金銭消費貸借契約書や抵当権設定契約書の内容を借主に説明する。興味深いのは、その際に、契約書の内容を全部読んで確認を求める担当者も居れば、金額、利息、返済期間、期限の利益の喪失条項、担保保持義務などの点を中心に説明をする担当者もいる。
借主に対する説明であれば、それだけで足りるが、高齢者に対する説明をどの程度行うかは、なかなか興味深い。抵当権の説明や競売の説明をどの程度行うのかという点である。担当者の説明の後、私の方で確認のために改めて説明を行うが、結構難しい(抵当権の説明など、真面目に考えれば、法学部の授業と一緒になってしまう。)。期限の利益の喪失、一括弁済義務、任意売却の可能性を探る、任意競売、所有権の移転と明渡し義務、残債務の存続などの理解を確認することになる。
その高齢者が昔事業をやっていて銀行から金を借りたことがあるというような人だったりすると、安心するが、そうでないと大変である(これまで合った高齢者で心配しなければならない事例には当たっておらず、ほっとしている。)。当然ながら、金証や抵当権設定契約書への署名、押印も自分で行ったことを確認しなければならない。
ただ、近時の契約書の作成については、銀行などの金融機関も相当に慎重であり、契約書の重要な部分を声を出して読んで、借主の確認を求めたうえで、借入額、資金使途、利率、返済期間などは借主に書かせることが徹底している(当然である。)。しかも書き間違えのあった場合に訂正印による書直しhがさせていないので、全体にすごく時間がかかることになる(この日は高齢者が居て、私と言う弁護士もいたため、いつもより慎重で時間が掛かったたのかもしれない。)。いずれにせよ、契約段階でのトラブルは未然に防げていると考えている。
なお、念のために言えば、私は当該高齢者から依頼を受けたということで、高齢者との間での契約となっている。当然だが、私はコン『銀行の顧問でもなく、代理人として事件も受任していない(利益相反を避けたいと思っている。)
高齢者が、資産を持っていることから、事業資金が必要な子供にとっては、その親の土地。建物を担保提供してもらうということが、考えられるからである。
最初の問題は、高齢者の意思確認をどの程度行うのかという点である。この点は、公正証書遺言の場合の公証人の立会いと同じような問題なのかもしれない(ただし、遺言の場合よりもかなり複雑である。)。まず、本人確認(写真のついているもので確認する。免許証やパスポートの無い場合は、住民基本ネットなどの利用しかない。話をしてその答え方で、聴力や理解力を確認する。生年月日を言って貰うだけでは足りない。日常の生活ぶり(テレビの番組の話やニュースの話にどの位関心があるかなど)を聞き、社会性の程度を探る(連帯保証や担保提供は、相当高度な社会的な行動である。)。
問題はここからである。通常は、借主(主債務者)も来ており、銀行の担当者が、金銭消費貸借契約書や抵当権設定契約書の内容を借主に説明する。興味深いのは、その際に、契約書の内容を全部読んで確認を求める担当者も居れば、金額、利息、返済期間、期限の利益の喪失条項、担保保持義務などの点を中心に説明をする担当者もいる。
借主に対する説明であれば、それだけで足りるが、高齢者に対する説明をどの程度行うかは、なかなか興味深い。抵当権の説明や競売の説明をどの程度行うのかという点である。担当者の説明の後、私の方で確認のために改めて説明を行うが、結構難しい(抵当権の説明など、真面目に考えれば、法学部の授業と一緒になってしまう。)。期限の利益の喪失、一括弁済義務、任意売却の可能性を探る、任意競売、所有権の移転と明渡し義務、残債務の存続などの理解を確認することになる。
その高齢者が昔事業をやっていて銀行から金を借りたことがあるというような人だったりすると、安心するが、そうでないと大変である(これまで合った高齢者で心配しなければならない事例には当たっておらず、ほっとしている。)。当然ながら、金証や抵当権設定契約書への署名、押印も自分で行ったことを確認しなければならない。
ただ、近時の契約書の作成については、銀行などの金融機関も相当に慎重であり、契約書の重要な部分を声を出して読んで、借主の確認を求めたうえで、借入額、資金使途、利率、返済期間などは借主に書かせることが徹底している(当然である。)。しかも書き間違えのあった場合に訂正印による書直しhがさせていないので、全体にすごく時間がかかることになる(この日は高齢者が居て、私と言う弁護士もいたため、いつもより慎重で時間が掛かったたのかもしれない。)。いずれにせよ、契約段階でのトラブルは未然に防げていると考えている。
なお、念のために言えば、私は当該高齢者から依頼を受けたということで、高齢者との間での契約となっている。当然だが、私はコン『銀行の顧問でもなく、代理人として事件も受任していない(利益相反を避けたいと思っている。)
投稿者 あさひ共同法律事務所 | 記事URL
2013年5月26日 日曜日
先週の1週間(2013年5月20日から24日まで)
先週の自分の行動を記録する(最近、きちんと仕事をしているのか、振り返ってみる。)。
20日(月曜日)、午前中は、いくつかの電話連絡らメールのチエックののち、23日(木曜日)の事件のために、前週に出された相手方からの準備書面に対する準備書面(第1案)を作る。昼間はロータリ-クラブへ行き、2時に帰ってくる。午後からは、24日(金曜日)が弁論準備期日の事件で相手方から7頁ものの準備書面がこの日の午前中に出されたので、その反論にかかる(第2回目の期日なので、書けるなら、期日の前日にでも反論を出しておきたい。)。それで、記載された内容の確認を依頼者に要請するとともに、少し書き始める(夜には、半分くらい書き終わる。)。
21日(火曜日)は、午前10時から打ち合わせ、その後、準備書面の続きを書く、午後から22日(木曜日)の事件」の依頼者と打ち合わせ。その後、打ち合わせに基づきの一部を修正して準備書面を書く。その他の準備で、裁判所と弁護士会との協議会の作業行部会には行けず(なお、同作業部会には、うちの事務所の藤本弁護士も出席しているので、彼女に任せた。)。
22日(水曜日) 午前中は、昨日書いた準備書面を書き直す(事務所に出るまでの電車の中で、計算を間違えたことに気が付いた(立方体の辺の数)のであわてて修正した。4ページになった)。それで、午後にこの準備書面を出してもらう。午後は、法テラスの法膣相談(計5件)。これがかなり精神的に大変である。当然、初対面の方ばかりで、法律的な構成が不可能なものが多く、どのように説明するかで苦労する。これで疲れたが、残しておいた23日(金曜日)のための準備書面の続きを書く。
23日(木曜日)午前中に家庭裁判所に離婚事件(訴訟事件の弁論準備)で出廷する。事務所に帰ってきて、24日(金曜日)用の準備書面を書き上げる(10ページになる)。これを午後提出する。午後は、和解期日で1時間ほどかかる。せっかく書いた準備書面は提出扱いとなる。ただ、和解期日は、今後の進行の点からも重要な期日となるので、プレゼンには心の準備が必要だった。
終わったら、疲れていたので、この日はスポーツクラブに行くことにして、6時に事務所を出る。
24日(金曜日)午前中に弁論準備が1件、1時間近くかかる。この事件もここが大きな分かれ目となりそうである。
その後、契約の立会に行く(ある銀行のシステムで、75歳以上の方が連帯保証人兼担保提供者なので、その意思確認のために弁護士が立ち会うシステムになっている。) 。2時間くらいかかった。
午後は、ようやく前日に反論の準備書面を出した事件の弁論準備期日。実質1回目の期日で、双方からの準備書面と証拠(双方から合計30号証が提出される)。事実関係がほぼ確定したかどうか。やはり1時間近くかかった。夕食は、近くに来ていた妻と一緒にする(このため、事務所を6時過ぎにでる。
このように、今週は、よく仕事をしたようなので、土曜日には、事務所に行かないことにする(妻に花の入れ替えのための園芸用品の買物に付き合う。)。来週は、日弁連に行かなくてはならない。
20日(月曜日)、午前中は、いくつかの電話連絡らメールのチエックののち、23日(木曜日)の事件のために、前週に出された相手方からの準備書面に対する準備書面(第1案)を作る。昼間はロータリ-クラブへ行き、2時に帰ってくる。午後からは、24日(金曜日)が弁論準備期日の事件で相手方から7頁ものの準備書面がこの日の午前中に出されたので、その反論にかかる(第2回目の期日なので、書けるなら、期日の前日にでも反論を出しておきたい。)。それで、記載された内容の確認を依頼者に要請するとともに、少し書き始める(夜には、半分くらい書き終わる。)。
21日(火曜日)は、午前10時から打ち合わせ、その後、準備書面の続きを書く、午後から22日(木曜日)の事件」の依頼者と打ち合わせ。その後、打ち合わせに基づきの一部を修正して準備書面を書く。その他の準備で、裁判所と弁護士会との協議会の作業行部会には行けず(なお、同作業部会には、うちの事務所の藤本弁護士も出席しているので、彼女に任せた。)。
22日(水曜日) 午前中は、昨日書いた準備書面を書き直す(事務所に出るまでの電車の中で、計算を間違えたことに気が付いた(立方体の辺の数)のであわてて修正した。4ページになった)。それで、午後にこの準備書面を出してもらう。午後は、法テラスの法膣相談(計5件)。これがかなり精神的に大変である。当然、初対面の方ばかりで、法律的な構成が不可能なものが多く、どのように説明するかで苦労する。これで疲れたが、残しておいた23日(金曜日)のための準備書面の続きを書く。
23日(木曜日)午前中に家庭裁判所に離婚事件(訴訟事件の弁論準備)で出廷する。事務所に帰ってきて、24日(金曜日)用の準備書面を書き上げる(10ページになる)。これを午後提出する。午後は、和解期日で1時間ほどかかる。せっかく書いた準備書面は提出扱いとなる。ただ、和解期日は、今後の進行の点からも重要な期日となるので、プレゼンには心の準備が必要だった。
終わったら、疲れていたので、この日はスポーツクラブに行くことにして、6時に事務所を出る。
24日(金曜日)午前中に弁論準備が1件、1時間近くかかる。この事件もここが大きな分かれ目となりそうである。
その後、契約の立会に行く(ある銀行のシステムで、75歳以上の方が連帯保証人兼担保提供者なので、その意思確認のために弁護士が立ち会うシステムになっている。) 。2時間くらいかかった。
午後は、ようやく前日に反論の準備書面を出した事件の弁論準備期日。実質1回目の期日で、双方からの準備書面と証拠(双方から合計30号証が提出される)。事実関係がほぼ確定したかどうか。やはり1時間近くかかった。夕食は、近くに来ていた妻と一緒にする(このため、事務所を6時過ぎにでる。
このように、今週は、よく仕事をしたようなので、土曜日には、事務所に行かないことにする(妻に花の入れ替えのための園芸用品の買物に付き合う。)。来週は、日弁連に行かなくてはならない。
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2013年5月25日 土曜日
弁護士会照会と銀行の守秘義務(東京高裁平成25.、4.11)
弁護士法23条の2に基づく銀行への照会に対して、銀行が守秘義務(預金者の秘密)を理由に拒否した場合に、その弁護士ないしは依頼者と銀行の関係はどうなるのか、という点に関する判例である。原判決(東京地裁平成24.11.26)は、この点で、次のような見解を示して、注目を集めた(このブログでも紹介した。)。
弁護士法23条の2に基づく照会は、弁護士会が個々の弁護士からの申し出を受けて、弁護士会がその要件を検討したうえで、各種機関に対し照会するものであり、照会先は弁護士会に対する回答義務を負っていると解されている。そしてその性質は公法上の義務であると理解されている。ただし、銀行は他方、預金者の秘密を守る義務があり、弁護士会からの23条照会を受けたとしても、その義務が当然に重いといえいるかどうかは、慎重な検討が必要である(ここまでは、ほとんど争いのない共通の理解である。)。
このことを前提として、原判決は、この事案(債務名義を種痘した債権者が、債権差押さえのために、債務者の預金の有無を調査しようとした事案)において、回答義務が優先するとして、銀行に弁護士会への回答義務があるとし、それを前提として、当該弁護士に、行政訴訟法4条の「公法上の法律関係に関する訴えの利益」があるとしたものである。本来、弁護士会と銀行の間の公法上の権利義務関係の確認につき、これを認めたという点画期的だった。
控訴審は、従来の考え方(弁護士と銀行の関係からすれば、行政訴訟法4条の適用はないとして、この点を否定した。
次に、原判決は、このケースで銀行に弁護士会に対する回答義務があることを前提にすると、当該弁護士に対する関係で銀行の不法行為が成立するかどうかの点について、不法行為の前提となる故意・過失の存在につき、23条の回答義務と守秘義務の優劣に関する見解も一致していない以上、故意過失の認定はできず、不法行為は成立しないとしていた。
控訴審は、23条違反が、弁護士会に対する公法上の義務であり、弁護士に対する義務ではない以上、弁護士に対する関係で銀行の違法行為は存在しないとし、故意過失についても、守秘義務と23条違反の関係についえtの最高裁判決もでていない現時点では、認めるこてゃできないとしてその成立を否定している。
確かに、守秘義務と23条違反について一般的な優劣関係を確定させることはできないと考えられる(その意味では、23条に回答しないというとが、義務違反となるわけではあるまい。ただ、本件のケースは、債務名義がすでに確定した債権者が債務者の預金の有無を調査しようというものであり、預金者の秘密の保護が重要なものというわけではない。現行の強制執行制度上、預金口座の特定が必要であり、そのための債権者の手段の確保という問題と、債務名義を取得されている債務者の預金口座の秘密の保持が、やはりh「同程度守られるべきものなのかどうかという点の判断がもう少し考えられるべきではないかと思われる。この点は、立法的な解決が図られるべき問題なのかもしれない。
弁護士法23条の2に基づく照会は、弁護士会が個々の弁護士からの申し出を受けて、弁護士会がその要件を検討したうえで、各種機関に対し照会するものであり、照会先は弁護士会に対する回答義務を負っていると解されている。そしてその性質は公法上の義務であると理解されている。ただし、銀行は他方、預金者の秘密を守る義務があり、弁護士会からの23条照会を受けたとしても、その義務が当然に重いといえいるかどうかは、慎重な検討が必要である(ここまでは、ほとんど争いのない共通の理解である。)。
このことを前提として、原判決は、この事案(債務名義を種痘した債権者が、債権差押さえのために、債務者の預金の有無を調査しようとした事案)において、回答義務が優先するとして、銀行に弁護士会への回答義務があるとし、それを前提として、当該弁護士に、行政訴訟法4条の「公法上の法律関係に関する訴えの利益」があるとしたものである。本来、弁護士会と銀行の間の公法上の権利義務関係の確認につき、これを認めたという点画期的だった。
控訴審は、従来の考え方(弁護士と銀行の関係からすれば、行政訴訟法4条の適用はないとして、この点を否定した。
次に、原判決は、このケースで銀行に弁護士会に対する回答義務があることを前提にすると、当該弁護士に対する関係で銀行の不法行為が成立するかどうかの点について、不法行為の前提となる故意・過失の存在につき、23条の回答義務と守秘義務の優劣に関する見解も一致していない以上、故意過失の認定はできず、不法行為は成立しないとしていた。
控訴審は、23条違反が、弁護士会に対する公法上の義務であり、弁護士に対する義務ではない以上、弁護士に対する関係で銀行の違法行為は存在しないとし、故意過失についても、守秘義務と23条違反の関係についえtの最高裁判決もでていない現時点では、認めるこてゃできないとしてその成立を否定している。
確かに、守秘義務と23条違反について一般的な優劣関係を確定させることはできないと考えられる(その意味では、23条に回答しないというとが、義務違反となるわけではあるまい。ただ、本件のケースは、債務名義がすでに確定した債権者が債務者の預金の有無を調査しようというものであり、預金者の秘密の保護が重要なものというわけではない。現行の強制執行制度上、預金口座の特定が必要であり、そのための債権者の手段の確保という問題と、債務名義を取得されている債務者の預金口座の秘密の保持が、やはりh「同程度守られるべきものなのかどうかという点の判断がもう少し考えられるべきではないかと思われる。この点は、立法的な解決が図られるべき問題なのかもしれない。
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2013年5月18日 土曜日
労働委員会の研修で水町教授の講演を聴く(その2)
先日に引き続いての研修会での水町教授の話である(約束した翌日に更新できず申訳ない。)。
教授は、「労働審判制度において弁護士はどのような役割を担っているか?」ということに続いた。労働審判での弁護士依頼率は労使とも8割以上なっている。弁護士の評価については労使双方とも高いということであった。ただし、弁護士費用については労使双方とも、「(非常に・やや)高い」という回答が多く、推測ではあるが、非正規労働者に労働審判の利用を躊躇させている可能性があるという指摘であった。
これをさらに詳細に分析すると、労働者側は、相対的に複雑な事件(弁護士依頼の多い性質の事件)では、弁護士を依頼することにより、解決金を高める効果が大きく、当該労働者の手間や負担感を軽減しているとされている(要するに、弁護士を付けるメリットが大きかったということである)。ただし、その点(弁護士による争点整理や陳述書などの書面の作成といった主張・立証活動が、そのような効果を与えているという点の認識が当該労働者に乏しいということであった(当事者の有利な結果を勝ち取ったという認識や満足感に弁護士の活動が貢献したという認識に乏しい。)。水町教授は、弁護士の役割についての広報活動が必要であるとされている。
この点は、雇用関係の終了が争われる事件で、金銭解決という解決方法について労働者が納得していないということがあるかもしれない。金銭の問題ではないという労働者の感覚と弁護士の多額の金銭を勝ち取ったという感覚では、労働者の満足度に違いがあるのかもしれないという思いはする。弁護士の立場からすると、その点は、金銭賠償という形を取る以上はある程度やむを得ないことだと思う。また労働審判制度が3回の期日で終了し、しかも解決まで3ヶ月はかからないという非常に短い期間に、そのような意思決定を迫られることから、労働者とすると十分に考えることtができない、弁護士に結論を急がされるという思いがあるのかもしれない。
私も労働者側で労働審判を申し立てたことが何回かあるが、就業規則や賃金規程についても、労働者に十分な知識があるとは言い難く、会社との交渉の過程などをそれなりにきちんと構成し、証拠の足りないところを指摘し、労働審判での2回の期日の間に、ある程度のラインでの妥協を考えるというのは、なかなか大変な作業であるの事実である。その辺りをどのように理解してもらうのはやはり難しいことであるが、丁寧に説明するということをやらなければならないということを改めて実感する。
他方、相対的に簡易な事件については、弁護士を付けるということが解決金の金額を高めることになっていないと分析されている。そのうえで、教授は、弁護士ではなく、労働組合や特定社会保険労務士を労働審判における許可代理人とすることを提案されている。
確かに、相対的に簡易な事件は、いわゆる訴額(紛争を金額で評価した場合の金額)も高くなく、弁護士がついていても、そうでなくとも、解決金に大きな違いがない場合が多いと思われる。その場合は、解決金と比べて弁護士の着手金や報酬が高い割合を占めることは否定できないが、それでは、労働組合や特定社会保険労務士を許可代理人とした場合に、そのような費用が格段に違ってくるかというとそうはならないと思われる(労働組合の場合は組合の積立金から支出となうrので少し違うかもしれない。)。同じ類型の労働審判だけをやっていれば、そのためのノウハウが積み上げられてその結果としてコストも低く抑えられ、着手金や報酬も安くなる可能性がある。しかし、そのような場合を除けば、弁護士と特定社旗保険労務士で、着手金や報酬が異なるとは思えない(少し違うが、認定司法書士に簡易裁判所での代理ガ与えられたが、簡易裁判所での同じ事件で、弁護士と司法書士の間で着手金や報酬に(有位な)差があるというようには聞いていない。簡易裁判所の事件であるから訴額も大きくなく、コストの面では弁護士も司法書士も大きな違いはないからである。)。この点は、弁護士も小額な事件では着手金や報酬について法テラスの利用などを行っており、その活用で対応するしかないのではないかと思っている。
使用者側の弁護士依頼の効果については、使用者にとって、弁護士を依頼することが、解決金の低額化や依頼者の手間や負担感に影響を与えておらず、結果についての満足度を高める方向には働いていないという分析結果が出ている。つまり、使用者には、弁護士を依頼する効果が現れていないという不満があるということである。
この点について、教授は、使用者弁護士は労働審判から通常訴訟に移行した場合の時間や金銭面でのコストを考えて労働審判での解決金を引き上げても調停による早期の解決を考えているのではないかと推測されている。そのうえで、使用者にはそのようなコストの大小や通常訴訟での見込みが十分に予測できないことから、弁護士に対する満足度が低いとされている。
確かに、私の経験からいっても、使用者側代理人として労働審判の申立てを受けた際には、労働者が雇用関係の継続を主張したとしても、最終的には何らかの解決金の支払により雇用関係を終了させるという解決が可能であると見てよいと思っている。その上で、労働審判において、解決金による交渉が始まった場合は、多少解決金の金額が高くても、通常訴訟で解雇の有効性が争われるといった問題を避け、早期に解決するという観点から、そのような解決を勧める場合がある。その場合に、将来を予測した説明ということになるので、十分に説得性のある説明が出来ているわけではない(特に、賃金に関しては、付加金や遅延損害金の説明が必要となるが、この説明が難しい。金額が膨大となる可能性もあるので、その説明が難しい)。
このため、依頼者にそのような不満が生じるのには理解がでないわけではない。しかも、判例における労働関係の法令解釈は、大企業はともかくも中小企業の経営者の感覚とは相当に離れている場合があるので、その辺りの説明非常に重要になってくるという教授の指摘は十分に納得ができるところである。
教授は、「労働審判制度において弁護士はどのような役割を担っているか?」ということに続いた。労働審判での弁護士依頼率は労使とも8割以上なっている。弁護士の評価については労使双方とも高いということであった。ただし、弁護士費用については労使双方とも、「(非常に・やや)高い」という回答が多く、推測ではあるが、非正規労働者に労働審判の利用を躊躇させている可能性があるという指摘であった。
これをさらに詳細に分析すると、労働者側は、相対的に複雑な事件(弁護士依頼の多い性質の事件)では、弁護士を依頼することにより、解決金を高める効果が大きく、当該労働者の手間や負担感を軽減しているとされている(要するに、弁護士を付けるメリットが大きかったということである)。ただし、その点(弁護士による争点整理や陳述書などの書面の作成といった主張・立証活動が、そのような効果を与えているという点の認識が当該労働者に乏しいということであった(当事者の有利な結果を勝ち取ったという認識や満足感に弁護士の活動が貢献したという認識に乏しい。)。水町教授は、弁護士の役割についての広報活動が必要であるとされている。
この点は、雇用関係の終了が争われる事件で、金銭解決という解決方法について労働者が納得していないということがあるかもしれない。金銭の問題ではないという労働者の感覚と弁護士の多額の金銭を勝ち取ったという感覚では、労働者の満足度に違いがあるのかもしれないという思いはする。弁護士の立場からすると、その点は、金銭賠償という形を取る以上はある程度やむを得ないことだと思う。また労働審判制度が3回の期日で終了し、しかも解決まで3ヶ月はかからないという非常に短い期間に、そのような意思決定を迫られることから、労働者とすると十分に考えることtができない、弁護士に結論を急がされるという思いがあるのかもしれない。
私も労働者側で労働審判を申し立てたことが何回かあるが、就業規則や賃金規程についても、労働者に十分な知識があるとは言い難く、会社との交渉の過程などをそれなりにきちんと構成し、証拠の足りないところを指摘し、労働審判での2回の期日の間に、ある程度のラインでの妥協を考えるというのは、なかなか大変な作業であるの事実である。その辺りをどのように理解してもらうのはやはり難しいことであるが、丁寧に説明するということをやらなければならないということを改めて実感する。
他方、相対的に簡易な事件については、弁護士を付けるということが解決金の金額を高めることになっていないと分析されている。そのうえで、教授は、弁護士ではなく、労働組合や特定社会保険労務士を労働審判における許可代理人とすることを提案されている。
確かに、相対的に簡易な事件は、いわゆる訴額(紛争を金額で評価した場合の金額)も高くなく、弁護士がついていても、そうでなくとも、解決金に大きな違いがない場合が多いと思われる。その場合は、解決金と比べて弁護士の着手金や報酬が高い割合を占めることは否定できないが、それでは、労働組合や特定社会保険労務士を許可代理人とした場合に、そのような費用が格段に違ってくるかというとそうはならないと思われる(労働組合の場合は組合の積立金から支出となうrので少し違うかもしれない。)。同じ類型の労働審判だけをやっていれば、そのためのノウハウが積み上げられてその結果としてコストも低く抑えられ、着手金や報酬も安くなる可能性がある。しかし、そのような場合を除けば、弁護士と特定社旗保険労務士で、着手金や報酬が異なるとは思えない(少し違うが、認定司法書士に簡易裁判所での代理ガ与えられたが、簡易裁判所での同じ事件で、弁護士と司法書士の間で着手金や報酬に(有位な)差があるというようには聞いていない。簡易裁判所の事件であるから訴額も大きくなく、コストの面では弁護士も司法書士も大きな違いはないからである。)。この点は、弁護士も小額な事件では着手金や報酬について法テラスの利用などを行っており、その活用で対応するしかないのではないかと思っている。
使用者側の弁護士依頼の効果については、使用者にとって、弁護士を依頼することが、解決金の低額化や依頼者の手間や負担感に影響を与えておらず、結果についての満足度を高める方向には働いていないという分析結果が出ている。つまり、使用者には、弁護士を依頼する効果が現れていないという不満があるということである。
この点について、教授は、使用者弁護士は労働審判から通常訴訟に移行した場合の時間や金銭面でのコストを考えて労働審判での解決金を引き上げても調停による早期の解決を考えているのではないかと推測されている。そのうえで、使用者にはそのようなコストの大小や通常訴訟での見込みが十分に予測できないことから、弁護士に対する満足度が低いとされている。
確かに、私の経験からいっても、使用者側代理人として労働審判の申立てを受けた際には、労働者が雇用関係の継続を主張したとしても、最終的には何らかの解決金の支払により雇用関係を終了させるという解決が可能であると見てよいと思っている。その上で、労働審判において、解決金による交渉が始まった場合は、多少解決金の金額が高くても、通常訴訟で解雇の有効性が争われるといった問題を避け、早期に解決するという観点から、そのような解決を勧める場合がある。その場合に、将来を予測した説明ということになるので、十分に説得性のある説明が出来ているわけではない(特に、賃金に関しては、付加金や遅延損害金の説明が必要となるが、この説明が難しい。金額が膨大となる可能性もあるので、その説明が難しい)。
このため、依頼者にそのような不満が生じるのには理解がでないわけではない。しかも、判例における労働関係の法令解釈は、大企業はともかくも中小企業の経営者の感覚とは相当に離れている場合があるので、その辺りの説明非常に重要になってくるという教授の指摘は十分に納得ができるところである。
投稿者 あさひ共同法律事務所 | 記事URL
2013年5月15日 水曜日
労働委員会の研修で水町教授の講演を聞く(その1)
私は、福岡県労働委員会公益委員に任命されているが、今日(15日)、明日(16日)と九州地区の労働委員会連絡協議会が佐賀市で開かれている。その中で、15日に東京都労働委員会公益委員で東大社研の水町教授の講演を聞く機会に恵まれた。
題目は、「労働審判利用者調査結果分析(全国)から労働委員会の役割を考える」というものであり、東大社研が、2011年の4か月間に全国で裁判所で実際に行われた労働審判の利用者(当然労使双方である)を対象にアンケート調査を行った結果(対象事件は約1000件であり、このうち、労働者側の3割、使用者側2割弱から回答を貰ったというアンケートの結果を分析したものである(結果の全体は、有斐閣から、2013年3月に「労働審判制度の利用者調査―実証分析と提言」という書名で出版されているということである。)。
労働審判については、年間約3500件、そのうち7割が解雇や雇止めに関する事件であり、その95パーセントが金銭支払の形で解決されているという統計的なことは私も知っていた。利用者の意識として、労働審判の「売り」であった「迅速性」については「満足」、「専門性」については概ね肯定的にとらえられている、「適性性」については労使とも「法的な権利義務」の重視を希望している(安易な利益調整を求めているわけではない)という意識のようである。
解雇や雇止めの事例で支払われる金額の水準は、労働局紛争調整委員会のあっせんよりは高く(一番多い中央値で100万円給与額の3、4か月分)で、裁判上の和解(中央値300万円給与額の15、6か月分)、判決(勝訴した場合)(中央地610万円給与額33,7か月分)とは相当に異なる(解雇が無効の場合、紛争解決が遅れるほど、使用者は支払わなければならない未払給与が毎月分増えることになる。)。
ただそれだけではなく、解雇が無効ということは会社の解雇行為が違法であるということなので、そのような違法であるという評価を労働審判の場で考慮する(その点を解決金の増額で考慮する必要があるのではないかということであった―裁判上の和解や判決の金額が高いのは、期間が長いだけでなく、その点も考慮されているのではないかというのが、教授の意見であった。(長くなるので、後半は明日に続けることにする。)。
題目は、「労働審判利用者調査結果分析(全国)から労働委員会の役割を考える」というものであり、東大社研が、2011年の4か月間に全国で裁判所で実際に行われた労働審判の利用者(当然労使双方である)を対象にアンケート調査を行った結果(対象事件は約1000件であり、このうち、労働者側の3割、使用者側2割弱から回答を貰ったというアンケートの結果を分析したものである(結果の全体は、有斐閣から、2013年3月に「労働審判制度の利用者調査―実証分析と提言」という書名で出版されているということである。)。
労働審判については、年間約3500件、そのうち7割が解雇や雇止めに関する事件であり、その95パーセントが金銭支払の形で解決されているという統計的なことは私も知っていた。利用者の意識として、労働審判の「売り」であった「迅速性」については「満足」、「専門性」については概ね肯定的にとらえられている、「適性性」については労使とも「法的な権利義務」の重視を希望している(安易な利益調整を求めているわけではない)という意識のようである。
解雇や雇止めの事例で支払われる金額の水準は、労働局紛争調整委員会のあっせんよりは高く(一番多い中央値で100万円給与額の3、4か月分)で、裁判上の和解(中央値300万円給与額の15、6か月分)、判決(勝訴した場合)(中央地610万円給与額33,7か月分)とは相当に異なる(解雇が無効の場合、紛争解決が遅れるほど、使用者は支払わなければならない未払給与が毎月分増えることになる。)。
ただそれだけではなく、解雇が無効ということは会社の解雇行為が違法であるということなので、そのような違法であるという評価を労働審判の場で考慮する(その点を解決金の増額で考慮する必要があるのではないかということであった―裁判上の和解や判決の金額が高いのは、期間が長いだけでなく、その点も考慮されているのではないかというのが、教授の意見であった。(長くなるので、後半は明日に続けることにする。)。
投稿者 あさひ共同法律事務所 | 記事URL